16世紀、世界中にキリスト教を広める上で、重要な役割を果たしたのが「イエズス会」です。
イエズス会は、カトリック教会に属する修道会の1つ。
特にポルトガル・スペインの支援を受けながら、アジアや南米などの新大陸に宣教師を派遣し、多くの人々にキリスト教を伝えました。
では、「カトリック修道会」とは何か?
なぜイエズス会がポルトガル・スペインの支援を受けながら布教を進めたのか?

利害関係か…
カトリック修道会とは?

カトリック修道会とは、カトリックの中で特定の目的を持って活動する団体のことです。
修道士や修道女が所属し、共同生活をしながら祈りや奉仕活動を行います。
修道会にはさまざまな種類があり、目的に応じて活動内容が異なります。
以下が、代表的な修道会。
- ベネディクト会:修道生活を重視
- フランシスコ会:清貧と奉仕を重視
- ドミニコ会:学問と説教を重視
- イエズス会:教育と布教を重視
イエズス会はカトリック修道会の1つであり、特に布教と教育活動に力を入れました。
キリスト教の教派
キリスト教といっても、教派によって分かれています。
日本でいう仏教の中の浄土真宗、日蓮宗のようなもの。
キリスト教の教派は大きく分けて3つ。
- カトリック
- プロテスタント
- 正教会
カトリック
カトリックとは、キリスト教最大の教派であり、ローマ教皇を最高指導者とする教会です。
起源は1世紀のイエス・キリストとその使徒たちにさかのぼり、2000年以上の歴史を持ちます。
カトリックは聖書だけでなく、教会の伝統(聖伝)も重要としています。
また、七つの秘跡を大切にし、ミサ(礼拝)を通じて神とつながることを重視。
世界中に約12億人の信者がおり、ローマ教皇庁(バチカン)が中心となって、教会を指導しています。
また、聖母マリアへの信仰や、聖人を敬う伝統も特徴の一つです。
プロテスタント
プロテスタントとは、16世紀の宗教改革によってカトリック教会から分かれた教派です。
プロテスタントは、「聖書のみ」を信仰の中心に据えたことから始まりました。
カトリックとは異なり、ローマ教皇の権威を認めず、伝統よりも聖書を重視するのが特徴。
また、七つの秘跡の多くを否定し、洗礼と聖餐(聖体拝領)のみを重要視する教会が多いです。
プロテスタントにはさまざまな流派がありますが、自由な信仰と個人の聖書解釈を大切にすることが共通点。
現在は世界中に広がり、キリスト教三大教派の1つとして、多くの人々に信仰されています。
正教会
正教会(東方正教会)とは、キリスト教の主要な教派の一つで、カトリックと並ぶ歴史を持つ教会です。
1054年の東西教会の大分裂(大シスマ)により、ローマ・カトリック教会と分かれました。
カトリックがローマ教皇を最高指導者とするのに対し、正教会は各国の総主教が指導します。
ローマ教皇の権威を認めず、より伝統的な典礼を重視する点が特徴。
また、イコン(聖画)を通じた祈りや、神秘的な信仰の実践を大切にし、カトリック同様に秘跡を重視します。
現在、ロシア、ギリシャ、セルビアなどを中心に広まり、世界に約2億人の信者がいるとされています。
正教会は、カトリック・プロテスタントとともにキリスト教の三大教派の1つとして、今も信仰が受け継がれています。
イエズス会とは?

1534年、イエズス会はイグナチオ・デ・ロヨラによって設立されました。
1540年にローマ教皇パウルス3世によって、正式に認可されたカトリック修道会です。
イエズス会の特徴
イエズス会の特徴は、以下です。
- 世界規模の布教活動
- 教育に力を注ぐ
- 厳格な組織と訓練
- ローマ教皇直属の修道会
世界規模の布教活動
イエズス会はヨーロッパに留まらず、アジア・南米・アフリカにまで布教を展開しました。
特に、ポルトガルとスペインの支援を受けながら、日本・中国・インド・南米などで積極的に活動しました。
教育に力を注ぐ
イエズス会は各地に学校や大学を設立し、学問を通じてキリスト教の価値観を広めました。
日本でも南蛮文化の伝播に、大きく貢献しています。
厳格な組織と訓練
会員は「従順」「規律」を重視し、知的・精神的な訓練を徹底的に受けます。
そのため、各地の文化や言語を学びながら、布教を進めることができました。
ローマ教皇直属の修道会
通常の修道会とは異なり、イエズス会はローマ教皇直属の組織として、カトリック信仰の普及を最優先に活動しました。
イエズス会とポルトガル・スペインの関係

イエズス会の布教活動は、ポルトガル王室とスペイン王室の強い支援を受けていました。
当時のカトリック教会は、プロテスタントの宗教改革によって勢力を失いつつあったのです。
この状況に対応するため、カトリックは布教活動を積極的に進める必要がありました。
その中心的な役割を担ったのがイエズス会です。
イエズス会は両国の後押しを受け、アジアや南米で広範囲に布教活動を展開しました。
ポルトガルの支援-アジアへの布教活動
ポルトガルは大航海時代を通じてアフリカ・アジアに勢力を拡大し、インドや日本、中国での布教を支援しました。
この背景には、ポルトガル王室がカトリックと密接な関係を持ち、宣教師たちを保護したことがあります。
イエズス会のフランシスコ・ザビエルは、ポルトガルの支援を受けて布教活動を行いました。
1542年、ポルトガル領のインド・ゴアを拠点に活動を開始し。
その後マラッカを経て、日本へ向かいます。
ポルトガルの支援により、イエズス会の宣教師たちはポルトガル船に乗って、安全に海外布教を行えました。
また、ゴアにはイエズス会の神学校が設立され、アジア各地で布教を行う司祭の育成も進められました。
スペインの支援-南米でのキリスト教布教
スペインは16世紀以降、新大陸(南米)に広大な植民地を築き、現地の先住民社会にキリスト教を広めました。
イエズス会はスペイン王室の支援を受け、先住民の改宗と教育に力を注ぎました。
イエズス会は南米でレドゥクシオンと呼ばれる先住民共同体を築き、布教を行います。
これは、先住民を集めて共同生活を営ませ、キリスト教の教えを浸透させるというものでした。
現在のアルゼンチン、ブラジルの地域では、イエズス会により数十万人の先住民がキリスト教に改宗しました。
ここではスペイン王室の支援のもと、教育や医療も提供され、先住民の生活が向上したとされています。
しかし、18世紀になると、スペインとポルトガルの利害対立が激化。
イエズス会は両国から追放され、レドゥクシオンも衰退していきました。
カトリックとポルトガル・スペイン王室の利害関係
カトリック教会とポルトガル・スペイン王室は、互いの利益のために密接な関係を築きました。
王室は海外植民地の拡大と支配を進めるため、キリスト布教を利用。
カトリック(イエズス会)は、布教のための資金や輸送手段を王室に依存しました。
ポルトガルとスペインは、ローマ教皇から「パドロアド」と呼ばれる特権を得ます。
パドロアドとは、海外布教を監督する権限。
スペインはキリスト教への改宗を理由に、先住民社会を支配。
ポルトガルはアジア貿易の拠点確保と、布教を結びつけました。
まとめ
- カトリック修道会とは特定の目的を持って活動する団体
- イエズス会とは布教と教育を重視する修道会。
- カトリックとポルトガル・スペインの利害が一致しイエズス会を支援
イエズス会の布教は、ポルトガルとスペインというカトリック大国の支援なしには実現しませんでした。
そのため、「16世紀にキリスト教を広めたイエズス会はどこのカトリック修道会?」という問いに対する答えは、「ポルトガル・スペイン」が適切です。
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